空腹と熱
どろりと内側に熱が注がれる感覚に、太刀川は長く息を吐く。達した直後のまだ残る全身を覆う熱を飼い慣らすようにゆっくりと呼吸をしていると、射精を終えた迅も力が抜けたように俯きながら熱い息を吐き出した。冬だというのにお互いに汗だくだし、汗だけじゃない色々でもうどろどろだ。
先程まで色んな水音や肌と肌がぶつかり合う音、互いの喘ぎ声が響いていた部屋の中は、今は二人分の呼吸の音が聞こえるだけだ。先程まで性感でちかちかしていた意識が段々と戻ってきて、太刀川は視線を動かして迅を見た。と、見られていることに気付いたのか迅もゆっくりと顔を上げる。前髪に隠されていた目が動いて、太刀川をとらえる。
達した直後だというのに、まだまだ足りないと飢えた獣のような青い目が、その中に太刀川を映す。
ぞくりとした。全身を駆けたのは恐怖などではない、間違えようのない興奮と欲だった。反射的に内側を軽く締め付けてしまったらしく、迅が「っん」と小さく声を漏らす。まだ迅をくわえ込んだままのそこはみっちりと迅のものに絡みついて、迅の形を教えてくる。まだおさまりきらない熱さも、再び固くなり始めた瞬間も、繋がっているから全部筒抜けだ。
「迅」
名前を呼ぶと、迅の目が動く。は、と吐き出した息はまだ整わないままで、切実さすら灯る熱が二人きりの空間にじわりと溶けていく。ホールドするように足を迅の腰の辺りに絡めると、迅の体が小さく揺れた。
「来いよ、もっと。俺も足りない」
そう言うと、迅の瞳がぎらりと獰猛さが増す。そのくせ眉根を寄せて、困ったような顔もしてみせる。その表情がいやに雄くさい。別に普段のへらへら余裕ぶった表情も嫌いではないが、それよりずっとこっちの方が好みだな、なんて本人に言ったら怒られそうなことを思考の隅で思う。
迅がひとつ瞬きをした後、急にぐんと腰を激しく打ち付けてくる。「っぁ、あ!」と堪えようもなく声が零れると、迅がふっと口角を上げる。その表情がひどくいやらしくて、それにまたばかみたいに煽られた。ぎらついた青に射抜かれるように見つめられたまま何度も突き上げられて、ついさっき達したばかりだとは思えないほど一気に体が熱を取り戻していく。それは内側にいる迅だって同じことだった。迅と二人でぐちゃぐちゃになって、ぐずぐずになって、溶けていく。そんな時間が好きだと、迅とこういう関係になってから知ったことだった。
迅のぎらついた青い目が、太刀川を射抜くように見下ろしている。もうお互い言葉を紡ぐ余裕なんてなくて、だけどその視線だけで食われてしまいそうな熱さに、迅だって同じ答えなのだと分かるのだ。