jazz up
部屋のドアを閉めた途端、頬を掴むみたいに両手で挟まれたかと思えば次の瞬間には唇が押し付けられた。柔らかくて、そして熱いそれが唇に触れて、迅はそれだけでいとも簡単に自分の体温がさらに一段引き上げられるのを感じた。
舌が唇に触れて、求められるまま唇を薄く開けば舌が侵入してくる。こちらの口内を好きに蹂躙しようとしてくる弾力のある舌を、それだって甘美な誘いに思えるくせにそう好きにはさせまいという負けん気が先に来てしまうのは、自分の悪い癖かもしれない。相手がこの人だから余計にだ。だけどそれだってこの人との楽しい駆け引きのひとつだった。
太刀川の後頭部に手を回して、口付けをより深くしてやる。こちらから舌を絡ませると、向こうだって同じように舌を押し付けて弱いところを狙うように探ってきた。負けず嫌いはお互い様だ。特に、ランク戦終わりでまだ気持ちが昂っているせいで、互いにそれに拍車がかかっているのがわかる。
それすらもこの人となら楽しかった。
「ん、……っ、は」
すぐに深くなった口付けに段々と息が苦しくなってくる。それでも互いになかなか離そうとせず、鼻にかかった声が吐息とともにこぼれた。ドアに押し付けられるような格好になっているから、触れている場所の熱さに対して背に触れたドアの感触の冷たさをより鮮明に感じて、まだ玄関だということを思い出させられてそれにいやに興奮した。
存分にランク戦で
もし太刀川がそうしなかったとしても、きっと迅からそうしていただろうと思う。
互いと戦り合って、楽しくて、もっと相手の熱に触れたくてたまらなくなった。やっぱりおれにはこの人なんだって、心の深いところまで強く実感させられる時間。そんな時間を過ごしてしまえば、もっと、と求めたくなるのは互いに自然な流れだった。
どのくらいの時間そうしていたか分からないほど濃厚なキスをして、ようやく唇が離れる。至近距離で見つめた太刀川の普段はぼんやりと表情の分かりにくい目が、間違いようもない欲と熱に濡れているのを見て、強い興奮と優越感のような感情がぶるりと迅の背中を震わせた。
「……待ちきれなかった?」
本部で持て余した別の種類の熱を、まさかその場で発散するわけにもいかない。連れ立って早足で帰宅した太刀川の部屋のドアを閉めた途端に熱烈なキスをされたことに対して、持て余した興奮と優越感のままににまりと煽るように口角を上げてみせれば、太刀川だって鏡写しみたいに物騒ないやらしい顔で笑う。
「お互い様だろ」
迅が感じたのと同じように、きっと太刀川だって感じている。同じ熱を持て余してたまらなくなっていること。分かられていることが恥ずかしいと思いそうだというのに、今はそれに高揚と喜びばかりを感じていた。