melt in the blue
迅に中を突かれる度、痺れるような快楽が起こって先端からは白濁混じりの先走りが滴り落ちる。口からは上擦った声が零れて、これが自分のものなのかと一瞬遅れてびっくりしてしまう。しかしそんな動揺をかき消すようにまた迅が腰を揺すってくるので、太刀川はまた短く何度も切れ切れの喘ぎ声を上げてしまった。全身が熱くて、苦しいとすら思うくらいに気持ちが良くて、頭が茹だる。快楽に思考が上塗りされていく。
今日の迅はいやにしつこくて、一度イかせた後は前はほとんど触ってこなくなったくせにそれ以外のところは触れていないところがないんじゃないかというくらいに手で、唇で、あるいは舌で何度も愛撫し性感を煽ってきた。特に乳首や尻の中はもういいというくらいにぐずぐずに溶かされて、すっかりひどい性感帯にさせられてしまった。
弱いところを突かれると体が大きく震えるのと同時に中をぎゅうと締め付けてしまって、それに迅が苦しそうに眉根を寄せた後口元を緩めて薄く笑った。その表情が信じられないほどに、みだりがわしい。その顔を見た瞬間、ぞくぞくと這うような性感が肌の表面を駆けていくような心地になる。
「太刀川さんの中、すげー気持ちい……」
熱いし、きついし、とわざとらしいくらいの声音で言いながら迅の手が太刀川の腹を撫でた。ぬかるむほどに太刀川が吐き出した精液や先走りが、迅の指に絡みついてぬめらせる。触れた迅の体温の感覚を追えば、自然とその下に埋められているもの、自分の内側にいる迅の存在を強烈に再認識させられて、それだけで体温がさらにぐんと上がってしまう。
ああもう、迅のものが、こんな奥まで。だけどもっと奥があることを自分はもう知っている。そう思えば、期待にぶるりと体が震えた。全身が心臓になったのではないかというくらいに鼓動がうるさくて、上がった体温をいなそうとするように口からは荒い息が零れる。そんな太刀川を見て迅は上機嫌そうに目を細めたので、この手つきは、きっとそこまで計算してのことだろう。
「ぃ、あ、あ……」
迅に中を擦られる度、肌に触れられる度、口からは馬鹿になったんじゃないかというくらい声が溢れて止められない。しつこいほど性感を与えられ、喉がひりつくくらい喘がされて、もう限界なんてとうに超えている気がしたのに迅はまだ太刀川を追い詰めてくる。迅は腰をぎりぎりまで引いて浅いところを愛撫した後、固く張り詰めた性器の先端で前立腺を抉ってきた。前立腺はもう、否応なしに強い快楽を拾ってしまう部位だ。体がびくびくと震えて、軽く達したようにまたどぷりと先走りが溢れて落ちる。
最初の頃はぎこちなくて笑えるほど丁寧だった迅も、回数を重ねるうちにコツや塩梅を掴んできたのだろう。最初はこちらのほうが幾分余裕ぶっていられたというのに、今ではこうして太刀川が翻弄されてしまう夜だってある。それにいちいち、さっきみたいに煽るような口調でいやらしいことを言うようにもなった。
かつての日に、太刀川に勝ちたくて新しい武器まで作ってみせた負けず嫌いの迅らしいとも思う。太刀川の余裕が削れるのを見れば、迅はひどく嬉しそうな顔をしてさらに調子づくようになった。とはいえ迅のそういうところだって太刀川は結局好ましいと思っているし迅のそういう顔もとても好きな顔なので、基本的にはまあ、いいのだけれど。
しかし今夜のこの男はとりわけ調子づいて、性質が悪い。
「ぅあ、あ……んん、っ」
少しでも前を触ってくれたらすぐにでも絶頂に至れそうなのに、迅は今日はひたすらに中を責める気らしい。焦れて限界で、触ってくれと懇願しても迅ははぐらかすばかりだった。迅に構われないままに反り立った性器は決定的な刺激を待って、だらだらとはしたなく蜜を零し続けている。
体の中で暴れ回る熱。中でしつこく高められ煮え切ったそれが、未知の場所へと己を連れていこうとしているのが感覚として分かった。それに気付いた瞬間反射的に、怖い、と思った。
「……っ、じ、ん、やばい」
言葉の途中でまた中を擦られて、うあ、とまた思考も介せぬまま甘ったるい声が零れる。
今でさえ散々快楽を与えられて気持ちよくなってどうしようもなくなっているくらいなのに、まだこの先があるのか。そんな場所に行ったら自分は、どうなってしまうのか。
普段であれば未知というのは自分にとってわくわくするものであるばかりのはずなのに、今は先が見えないことに怖さを覚えた。そんな自分にも驚いて、しかしそんなことを思っている間にも迅は律動を止めない。体中が熱い。どんどん体ばかり高められて、体に気持ちが追いつかない。気持ちが良すぎてじわりと視界が生理的な涙で滲んで、瞬きをしては零れていく。また弱いところを突かれて、喘ぐ声が震えた。
「ぁあ、あっ!」
過ぎた快楽を少しでも逃がそうとするように体は思わず身じろぎをしたが、そんなことくらいでこの体に溜め込んだ熱は抜けてくれるはずもない。
自分の体が作り変えられていくような感覚。これまで体を使うこと全般で苦労した経験はなかった。だというのに今、体が自分の意思に反して遠くに行ってしまうような心地がした。自分の体がままならないなんて慣れない経験に頭が混乱する。こんなの知らなくて、だから、口から零れた声は思わず泣き言のようになってしまった。
「っあ……、迅、も、無理、変になりそ、だ……っ」
迅が虚を突かれたように腰の動きをぴたりと止める。そうして迅は一瞬目を丸くした後、その青い目を興奮でさらにぎらつかせた。射貫かれる。それだけで背筋がぞくりと強くそそけ立った。は、と迅が吐き出した息がいやに軽薄な響きをして、目の前の男がいかに興奮しているかを伝えてくるようだった。
「いーよ、変になっても。大丈夫だから」
その目は強くぎらついているくせに、声は太刀川を宥めるようにひどく優しい。
言った後、迅がシーツの上に投げ出されていた太刀川の手を握る。その声と汗ばんだ手のひらの感触、そして普段より熱く感じる迅の体温に、らしくもなく不安になった心が解かれていく。太刀川の耳元に唇を寄せた迅が、まるで内緒話でもするかのような太刀川にだけ聞こえる声で囁いた。
「おれでいっぱい気持ちよくなって。太刀川さん」
迅の言葉を飲み込んで、ああそうだ、これを与えてくるのは迅なのだ――と思えば、ふっと体の強張りが抜けた。
迅にならばこの体を全部、任せられると思ったからだ。
顔を上げた迅が、太刀川の表情を見下ろしてふっと笑う。その表情をかわいく思って、名前を呼びたくて口を開く。しかし迅が律動を再開させたために、その声は喘ぎ声に変わってしまった。
迅に揺さぶられながら、限界が近づいてくるのが分かる。目の前がちかちかと眩むほどの快楽。もう体は自分の意思ではままならなくなっていて、自然と声が溢れて震えて、だけどそれを与えてくるのは、この手の温度は迅のものなのだと思えば怖さはなかった。元々思い悩むのは向いていない。ただ、己が信頼したこの男に任せればいい。喘ぎ声の合間にどうにか「じん、」と呼ぶと、迅の青い目の色がまた深くなった。迅が首元に噛みつくようにキスをしてきて、その少し痛いくらいの刺激にも感じてしまった。
律動の合間に、あーもうどうしよ、かわいい、太刀川さん、と熱っぽい余裕のない声で迅がうわごとのように繰り返す。そうした後に迅がぐんと一気に奥まで貫いてきて、強い衝撃に視界が白んだ。
「っ、ぁあ、あ、あ――~~……ッ!」
感じたことのないほどの強い性感に、体は勝手に大きくびくびくと繰り返し震えた。浮遊感と多幸感。自分の先端からまた液体がとめどなく零れていくのとその開放感を、恍惚としてぼやけた意識の中で辛うじて感じ取れた。自分が今どこにいるのかすら一瞬分からなくなって、しかし迅にぎゅっと強く手を握られた感触に引き戻される。ああ、迅だ、と思えば気持ちが驚くほどに強く満たされた。
まるで世界に自分と迅だけのような心地になって、触れた迅の感触と温度だけがすべてになる。その感覚はとても幸福なものだった。
迅も呻いて太刀川の中に熱いものを吐き出して、迅のものが内側に注ぎ込まれるその感覚すらもひどく敏感になった体にはあまりにも気持ちが良くて幸福で、押し寄せるそれにほとんど無意識に迅の手を握り返す。そうしたら滲んだ視界の中で迅があんまり嬉しそうに柔らかく笑うものだから、ああなんかもうだめだと思って、太刀川は溢れる多幸感の中にその身を任せたのだった。